CL SMILE 2001 MAR. やさしい医学

移動の障害(その1)
「お婆ちゃんが歩かなくなったのですが、年のせいでしょうか」。
  家族からよく聞かれる質問です。歩くことが不自由になることを「移動の障害」と呼びますが、それには歩く能力そのものが低下する場合と、歩く意欲が低下する場合があります。「歩けない」のか「歩かない」のか、その原因を医学的に判断しないと、正しい対処はできません。
  「歩けない」原因となる病気の代表的なものは、脳梗塞や脳出血など、脳卒中に基づくマヒです。その他の脳や脊髄の病気、外傷などでも神経が損傷されると、脳から「歩け!」という命令が出せなくなったり、脊髄が傷付けられることで、命令が伝わらなくなったりします。
  しかし、命令が出せて、うまく伝えることができたとしても、足の筋肉が弱く、ひざなどの関節が変形していると歩くことができません。マヒがなくても筋肉が弱るのは、寒いからコタツに入ったまま動かない、腰痛やひざの痛み、坐骨神経痛など、動くと痛いから寝てばかりいるといった廃用症候群となっています。筋肉こ限らず、使われないことによって、さまざまな身体機能が低下します。
  マヒは後遺障害として治せないことが多いのですが、ひざの痛みは治療できますし、廃用症候群は閉じこもりや引きこもりを防ぐことで予防できます。このような状態を「年のせい」とあきらめると、病態はさらに重度化します。
  そして忘れてはいけないのが、脊椎の変形を原因とする歩行障害です。年齢とともに骨粗鬆症が進行し、背骨がつぶれて椎間板という軟骨が変性すると背中が丸くなり、身長は低くなります。これを円背、亀背などと表現ますが、背中が丸くなるといつもお辞儀した状態ですから、長く立っていられなくなります。このような方が背中を伸ばすと、ひざを曲げて立位のバランスをとらなくてはなりません。
  しかし、ひざを曲げて立つと大腿四頭筋などの筋肉をいつも使うことになるので、筋肉が疲労して立っていられなくなるのです。だから杖をついたり、シルバーカーを押したりして、背中を丸くしたままで歩く工夫をすると、意外に長い距離を歩くことができます。
  ところが、マヒもなく、姿勢も悪くなく、関節の変形も、痛みも筋力の低下もない状態で、歩けなくなる病気があります。このような病気については、次回お話しましょう。
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