医学通信社 月刊 保険診療9 
特集/介護保険の総まとめ

在宅介護の実体を無視結局は医療に頼ること
 実際に在宅医療に携わると,在宅療養中の高齢者の多くが,医療以上に介護を必要としていることがわかる。三度の食事をしっかりとり,入浴などにより身体を清潔に維持し,快適な環境で十分に睡眠をとるなど,当たり前の生活がなおざりにされ,そのような症例にはいくら医療を提供しても医療の意味は薄れ,治療効果を期待しづらい。すなわち,在宅医療は,しっかりとした介護力に支えられるのである。患者がいかに重症であっても,介護力があれば在宅療養が継続できる。軽症だからといっても,介護力が乏しいとそれは破綻するのである。
  このような観点から,介護保険の導入は,高齢者の在宅医療の普及に一見朗報といえるが,要介護認定という手続きが複雑怪奇であり,そのうえ痴呆と麻痺(脳血管障害後遺症)以外の疾患では,実際には利用できない可能性が非常に大きい。
  また,在宅療養への意欲,意志のない患者やその家族介護にとっては,介護保険サービスがいくら手厚くとも,在宅で療養することは困難である。たとえ毎日2時間のサービスを受けたとしても,残る22時間は家族介護に頼らざるを得ないからである。
  経験的には,ちょっとした援助さえあれば在宅療養可能な症例がたいへん多いが,こういった例は要介護認定で自立と判断される可能性が高く,したがって介護保険サービスが利用できず,結局医療サービスがその穴埋めをすることとなるだろう。たとえば要支援状態と認定されると老人保健施設の入所はできないが,病院への入院は可能なのである。
  施設から在宅へのシフトが介護保険の大きな意義で,目的でもあるはずだが,介護度の基準となる介護時間の換算は,在宅でのタイムスタディーをいっさい行わず,国家資格をもつ介護専門職が組織的に行う施設での介護時間をむりやりに在宅に当てはめている。つまり在宅介護の実態が無視されたまま制度化が先行しているのである。
  われわれの診療所では,約300例の在宅医療の経験をもつが,その1/3は介護保険適応の要件を満たさない。在宅酸素療法を行っている症例,癌のターミナルケア(在宅ホスピスケア)の症例,65歳に満たない筋ジストロフィー,脊髄損傷,脳性麻痺の症例などでは,介護を必要とするにもかかわらず,介護されている。
  在宅で療養する意志があれば,基礎疾患にかかわらず,誰にでも,いつでも,どこででも,必要な介護が必要なだけ提供されなければ,在宅療養が一般的になることなどあり得ないと思っている。
  したがって,要介護認定のいらないフリーアクセスの医療が,在宅医療の分野でも施設医療の分野でも結局頼られることとなり,しばらくは従来の構図が改革されることはないと考えるがいかがだろう

TOPへ  おやま城北クリニック  蔵の街診療所  街かどクリニック・世田谷  生きいき診療所  生きいき倶楽部  訪問看護おやま  ケアセンター 居宅生きいき ケア研究所 RISTEX 理事長の部屋  最新情報  アスムス概