CL SMILE シーエルスマイル2001年7月号

やさしい在宅の医学

医学博士 太田秀樹

障害を正しくとらえる
情報の障害(その2) 聴力障害

 高齡者の在宅ケアは、医療保険と介護保険が担います。言葉を変えれ
ばキュアを医療に求め、ケアを介護に委ねる。つまり病気は医療、障害
は介護ということになります。高齢者が抱える身体機能の障害や、それ
によるさまざまな能力の低下、さらに社会的不利益を理解してケアをし
ていくことが必要です。

 誰でも40歳を超すと、聴力は下り坂となり、65歳以上の35%の人が日常生活に支障をきたす聴力障害を持つことになります。ところが自分で「耳が遠くなった」と理解していない方も少なくありませんから、その対応はより厄介です。
生活の場に足を運ぶと、聴力障害がありそうだと疑うきっかけがあります。テレビやラジオの音量に注意してみましょう。耳をふさぎたくなるほどの音量で、平然と聞き入っているようなときは、これは明らかな聴力障害です。このような方は電話での対応が困難なことが多いのですが、聞こえているふりをする場合もあり、訪問時間の変更などの相談では、些細なことから誤解を生じることになりかねません。
こういった老人性の難聴には、高い声から聞こえづらくなる特徴があります。女性の声より男性の声のほうが聞き取りやすいことになります。したがってただ大きな声で話すだけでなく、声のトーンヘの配慮も必要です。さらに言語を聞き分ける能力も低下しますから、1つひとつの単語をはっきりと、ゆっくり話すことも大切です。
しかし、いったん損なわれた聴力の回復が困難な場合は、良好なコミュニケーションのために補聴器を利用することになります。最近では高性能で非常にコンパクトな補聴器が開発され、正しく利用すれば失われた聴力をある程度取り戻すことができます。そのためには難聴の原因を考えなくてなりません。
少々医学的な話となりますが、難聴には大きく2つの原因が存在します。その1つは、耳の奥の(内耳)の神経細胞がやられる感音性難聴と、骨を通して振動が伝わりにくくなる伝音性難聴です。ちなみに耳をふさいでも、音が聞こえるのは、骨を通して音が伝わるからです。そしてその両方がかかわる混合性難聴もありますが、原因によって補聴器の選び方が変わります。
ただ音を増幅して、大きくするだけでなく骨伝導を利用することで音楽を楽しむこともできるようです。
しかし、補聴器は老眼鏡と違って、いかにも年寄りじみているというイメージが嫌われ、積極的に使われない傾向があります。でも音の少ない世界で生活すると、痴呆が進みやすいという研究報告もあるので、お年寄りの自尊心を傷つけないように、補聴器を勧めてほしいものです。
情報の伝達はコミュニケーションの手段として非常に大切です。ところが眼と耳から得られる情報以外でも、コミュニケーションを取ることができるのです。それは触覚です。お年寄りの一番近いところで、お世話をするヘルパーさんたちが、もしかしたらスキンシップによるコミュニケーションの達人なのかもしれませんね。

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