総合記念シンポジウム・パネラーからのメッセージ

市民福祉に思うこと

在宅ケアネットワーク・とちぎ
太田秀樹
 飢えを福祉が、病を医療が支えてきたのですが、生活という視点に立つと、福祉と医療の壁はもはやなくなったといえるのではないでしょうか。
  特に介護保険制度の基本理念に立ち返ると、いままで明らかに医療サービスとして位置付けられた訪問看護や訪問リハビリが、利用者とケアマネジヤーの希望でケアにパッケージされることになり、現場の混乱に輪をかけています。従来、医師の指示なくして行えない医療が、医師の裁量からはなれ市民側にすりよると、これが医療の福祉化と表現されているようです。
  同時に医療と医学のバラダイムも時代と共に変遷し、サイエンスとしての医学は、医師の手から離れ、優秀な科学者らの手中におさめられ、とりわけ遺伝子の解析から医療への応用などは、国家の枠すら越え、医師は完成された技術を応用するだけの、単なる技術屋になってしまったように感じます。外科医の端くれの医師として語れば、臓器移植の技などは、倫理の壁の高さを考えれば、遥かに低いと思っています。
  従って人の死を医学の敗北と認めざるを得ない医療も、治せない病と対峙し、実りある人生を支えようという医師側の意識改革が求められるに至り、全人的に生活全体を見ていく医療の重要性が、さらに取りざたされると、これこそが医療本来の姿であると感じる市民が徐々に増えています。医療の心は、まさに福祉の基本精神となんら異なることはないことが再認識されるに至っています。医学を自然科学と呼ばせていただければ、医療は社会科学そのものであるというのが、偽らざる気持ちです。
  市民福祉の概念を論ずることは、地域の構成員たる市民の意識を問うものです。地域福祉、市民福祉は両輪といえると思います。地域福祉とは耳慣れた言葉ですが、これをコミュニティケアと訳せば、医療職もコミュニティケアを推進する一員となります。
  人が忌み嫌う飢餓と疾病においても、何らかの合理的解決手段をもつ福祉と全く無力な医療が共存して行かねばならないのが現実です。例えば死亡診断書を記載するという実務的作業をいとわない医師免許を手にした市民がいないかぎり、人生の最後を住み慣れた地域で過ごすことができないのです。
  社会は、専門職という技と地域をもった市民をもとめているのではないでしょうか。彼らの台頭が市民福祉時代の到来を告げるような気がします。

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