シルバー新報

2001年11月9日(金)

生活・ケア
どこへ行く老健(3)
 在宅支援を標榜する老健施設が最も重視するサービスはショートステイだろう。定期的に、あるいは緊急時に受け入れてもらうことで家族の介護疲れは大きく癒され、在宅介護を長く続けていく原動力になる。しかし、一方で本人よりも家族の都合が優先されたサービスであることにジレンマを抱える施設も少なくない。痴呆のお年寄りの利用が増えて、在宅復帰」には限界も見えてきたことも背景にある。茨城県結城市の「生きいき倶楽部」では、本人と家族がともに無理なく暮らせるためのバックアップ施設を目指して新たな挑戦を始めている。
                (吉田乃美)
「生きいき倶楽部」は、在宅医療に専門に取り組む医師.太田秀樹さんが97年に開設した。病院を母体とした老健施設は多いが、無床の診療所から出発したところは全国でも珍しい。入所定員50名、デイケア40名の施設は、一回りするだけで勝手が分かってしまうぐらいこぢんまりとした空間だ。訪問看護・介護ステーション、居宅介護支援事業所が併設されている。
「老健で行うショートステイは、僕にとって夢と希望に満ちたサービスだったんですよ」 隣接市の大学病院で最先端医療の現場にいた太田さんが、患者の生活が見えない医療に疑問を感じて地域医療に転身したのは、今から10年前。以来、看護婦やOT、PTなどとともに365日24時間体制の”出前医療〃に取り組んできた。かかりつけ医となった患者の数も、今では150人ほどに上る。病院に行かなくても必要な医療ケアが受けられることを身をもって実践してきた中で、老健のショートやデイは太田さんにとって在宅介護を長続きさせるために欠かせないサービスと映ったという。
「生きいき」では、五〇床の入所ベッドのうち、常にいくつかは緊急のショートステイ用に確保している。もともと小規模でスケールメリットがない上、空床分は介護報酬が算定されない。経営的には大変になるが敢えてショートにするのは、「生きいき」が在宅で療養する患者と家族を支えるバックアッフ施設として明確に位置付けられているためだ。
  高齢者は体調の変化が激しく、たった一晩の外泊中に急変することも珍しくない。あわてて柄院に駆け込んだらそのまま入院、寝たきりに逆戻りしてしまうこともままある。往珍機能が一体化した「生きいき」では、自宅に戻っている時も医療の不安はない。安心した家族が、あらかじめターミナルをお願いするケースも増えてきたという。
  地域に密着し、機動力のある在宅支援を実践してきた「生きいき」だが、介護保険で新たな壁にもぶつかっている。「痴呆のお年寄りの利用が増えて一律のケアでは対応しきれなくなった」 同じ排泄困難でも、自分で車いすの乗り降りができない人と、トイレが認繊できない痴呆のお年寄りが必要としているケアは違う。痴呆のお年寄りの場合在宅で介護を続けていけるかどうかは家族の気持ち一つにかかっているといっても過言ではないが、一方で家族の都合ばかりが優先されたサービスの利用が増えてしまっているといるという。
「生きいき」では、期限を設けて入所を打ち切ったりすることは一切していない。家族が納得できるまで話し合いを続けて待つ。中には二年以上になる人もおり、ショートと長期入所に二極化している状態だ。太田さんによると、50人中、30人以上は「早く帰りたい」と率直な気持ちを打ち明けるという。介護保険になって要介護1以上あれば入所の「権利」ができたことも、こうした状況に拍車をかけている。
  太田さんは現在、地域の別の場所でグループホームを開設する準備を進めている。運営は地域の有志とともに立ち上げたNPOで。痴呆のお年寄り同士で助け合って暮らす「もう一つの自宅」をつくりたいという。
「在宅医療に取り組む医師は徐々に増えている。ショートステイ機能の充実した老健の必要性は、今後さらに高まると思います」痴呆という障害に合ったやり方で、家族の介護支援と本人の自立を実現する。グループホームは、老健の在宅支援機能をより充実させていくための第一歩だ。
  老健はもともと痴呆のお年寄りの利用を想定してつくられた制度ではない。従来の方法で在宅復帰を目指しても、いずれ限界がくるのは避けられないだろう。
新しい老健への挑戦が始まっている。

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