CL SMILE シーエルスマイル 2003年6月号
やさしい医学講座 脱水症状
NPO法人在宅ケアを支える診療所
市民全国ネットワーク副会長
医学博士 太 田 秀 樹
 体重の60パーセント以上は水の重さです。スポーツドリンクのCMを観ていて、まるで身体が水からできているように錯覚させられることがありますが、まちがいではありません。水は細胞の中にも外にも存在しますが、高齢化に伴って細胞の中の水まで徐々に失われていきます。身体から水分が失われることを脱水といい、その状態を脱水症と言います。ある老人科の医師から「老化とはすなわち脱水の過程だ」と聞きましたが、以来、若い人を「瑞々しい」と形容するのは水のイメージから来ていると思えてなりません。
  虚弱な高齢者のほとんどが脱水傾向にあると言われていますが、その背景にはさまざまな原因があります。細胞に水分が少なくなるうえ、喉の乾きを感じにくくなりますから「水分を取りたい」と思わなくなります。さらに、腎臓の機能が低下し、身体の水分を維持しづらい状況が作られていきます。腰や膝が痛む人は、トイレへ行くのがつらくなって意図的に水分を控えます。また、脳卒中のために嚥下障害がある人は水を飲むとむせてしまい、水分の摂取量が一層減ります。こうして、高齢者はますます脱水症になっていきます。
  脱水症になると、微熱が出たり、身体がだるくて食欲が低下したりします。食べる量が減ると食事に含まれる水分も取れなくなり、脱水状態に追い討ちをかけることになります。ひとたび、脱水症が引き起こされて身体の水分が少なくなると、血液は粘稠度が高まって流れにくくなり、脳梗塞や心筋梗塞の原因となったり、痴呆症状を増悪させたりします。また、尿の量も減少し、濃い尿はばい菌の繁殖しやすい状態です。ばい菌によって炎症が起こると、これは尿路感染といって、高熱が生じることもあります。
  脱水状態が続くと、生命を維持するために失われる水分をより少なくしようと、いろいろな反応が身体に生じます。たとえば、便からの水分の再吸収が盛んになって便秘が増悪し、発汗量が減少すると体温のコントロールが困難となるという具合です。病態を複雑化させないためには、脱水症に早く気付いて適切に対処することです。1本の点滴で、見違えるほど回復する高齢者がたくさんいますから、慎重な対応をお願いします。
  このように、脱水症状の原因を知るとその予防はさほど困難ではありません。十分な水分補給に努めることが一番です。最近、高齢者のために開発された飲料水もありますが、スポーツドリンクでもいいでしょう。いずれにしても、毎食後には寿司屋で出される大きな湯飲みでお茶を飲むぐらいのつもりで水分の補給を。
  これから夏に向かい、汗をかく暑い季節にはより注意が必要です。しかし、実は寒い冬にも電気毛布や強力なエアコンで脱水症になる方がいらっしゃいます。お年寄りの命を奪う脱水症を予防するため、生活習慣をもう一度見直してみましょう。
TOPへ  おやま城北クリニック  蔵の街診療所  街かどクリニック・世田谷  生きいき診療所  生きいき倶楽部  訪問看護おやま  ケアセンター 居宅生きいき ケア研究所 RISTEX 理事長の部屋  最新情報  アスムス概要