訪問看護と介護〔第9巻・第1号〕 
医学書院  管理者日誌 I
訪問リハビリテーションをあなたに
医療法人アスムス
わくわく訪問看護ステーションゆうき
平 澤 由美子

OTがやって来た!

 平成15年4月,わが訪問看護ステーションに期待のヒーロー,作業療法士(OT)がやって来た!もともと茨城県はPTやOTなどのリハビリ職の人的資源が最下位レベルと言われている。そういう状況で,本物のOTが訪問看護ステーションの所属で就職してくるなんてことは衝撃的な事件と言ってよい。

 彼の採用によって,当ステーションは訪問リハビリテーションステーションとして,県から指定を受けることができた。常々リハビリテーションの重要性を訴えていた当法人の理事長も,やっと枕を高くして眠れることだろう。それにしても,茨城県指定・訪問リハビリテーションステーションって,なんだかカツコいいじゃないか。でも,これっていったいなに?

 介護保険サービスのなかでも,訪問リハビリの恩恵を受けている利用者はわずか1%。その上,茨城県にいたっては、これが皆無に近い状態だというからひどい話である。したがって,一部の訪問看護ステーションで活躍しているPT,OTの存在および活躍を目に見える形にすることにより,PT,OTが訪問リハの道に進んでくれるよう意図的に誘導しようとして,この訪問リハビリテーション構想が誕生したらしい。

 当ステーションに限っては,すでに兼務なり非常勤ではあっても,積極的に訪問してくれるPTが3人もいるので,ほとんど不便を感じることはなかったのだが,保険者にとっては県内の訪問リハの不足はかなり深刻な問題に違いない。気がついてみれば,うちはなんと恵まれていたことか。

 さて,そんなPT,OT大不況のなか,平野氏がどう丸め込まれてうちにやってきたのかは知らないが,一家の大黒柱でもある彼がそれまで勤務した病院を捨て,在宅ケアの世界に飛び込んで来るにはそれなりの勇気と覚悟があったと思う。今回そんな彼の“思い’をまとめてもらった。以下は彼の手記である。

訪問リハビリに関わって

平野 努 作業療法士

●本当のリハビリとは?

「リハビリテーション」という言葉は,外国語なのに知らない人はいないくらい,もはや日本語になってしまったほどよく知られた言葉だ。しかし,「リハビリテーション」の意味を正確に把握している人は少ない。おそらく病院など医療施設で,歩く練習をしたり,お箸を使う練習をしたりするような機能回復訓練や日常生活動作訓練がリハビリテーション(以下リハビリ)だと思っている人が多いだろう。でも,それはリハビリと言われるもののほんの一部であり,特に在宅においては,その人がその人らしく生活できるように,ありとあらゆる援助を行なうことがリハビリである。

 ところが大きな問題は,理学療法士(PT)や作業療法士(OT)という多数のセラピストが養成され,年々増加傾向にあるにもかかわらず,在宅において活躍するのは少数であるという現実である。だから介護保険上の「訪問リハビリテーション」というサービスをセラピストから受けている利用者は非常に少ない。そのため,居宅サービス関係者に,訪問リハビリの意義を正しく理解してもらえる機会がなく,リハビリは病院のなかで行なわれている機能訓練がイメージされやすいのだと思う。

●介護福祉士から作業療法士へ

 介護福祉士として勤めた約4年間,自分に何ができるか? と模索するなかで,新しいことへの挑戦も試みてきた。しかし,徐々に状態が悪化し,動けなくなっていく患者さんを目の前にしながら,よりよい援助を行なうためにはどうするべきか? という葛藤は,やがてリハビリテーションに関心を持たせるようになった。

 その後,作業療法士の資格を収得したものの,病棟での生活や退院後の生活を重視し,「住み慣れた場所で,たとえ障害があっても,その人らしく生活できるよう援助する」ことをモットーにしようとしていた私は,自分の無力さを感じずにはいられなかった。訓練室で「できる」ことでも,生活の場では「する」ことができないのだ。セラピストが1人で頑張って,その時だけ立つことができても,生活という視点で見ればほとんど無意味なのである。

 自宅に帰りたいのに帰れない人,やっと帰れたとしても,状態が悪くなって戻ってくる人があまりにも多い。こうした状況にならないためにも,在宅に関わるセラピストは不可欠で,患者を取り巻く人たちがチームとなって機能することができるならば,自分の理想は現実に近づくと思った。

●地域に感じる魅力

「住み慣れた場所で,たとえ障害があってもその人らしく生活できる」ということは,いかに幸せなことだろう。確かに言葉では簡単に言える。しかし実際には,家族の協力や,生活環境の改善など,実に多くの問題を解決しなければそれが実現できない,非常に厳しく困難な問題が山積みになっている。さらに本人だけの問題ではなく,家族の気持ちを変えることや,その人に関わるすべての人々の意識も変えなくてはならない。これが非常に手強い。協力的な家族ばかりではないし,福祉機器の導入や住宅改修にしても教科書通りにはいかない。本当に利用できるサービスの少なさに利用者と一緒に頭を抱えたこともある。

 しかし,一方で多くのやりがいを感じることも事実である。障害を抱えて自宅へ戻り,病院や施設のようにバリアフリーで守られた環境から一転して,障壁だらけの我が家でとまどうのは当たり前かもしれない。しかし,そのような方々の生活に沿ったリハビリを提供できると,自宅の狭い浴槽に入ることができるようになったり,車イスに乗って外に散歩に行けるようになる。利用者の満足げな笑顔を見る時が,一緒に喜べる瞬間だ。

 まだまだ経験が浅く,その未熟さゆえに思うようにいかないことも多いが,気持ちだけが空回りしないように,利用者本位を忘れないように頑張っている。いわば福祉住環境コーディネーターを超えた,「住み慣れた場所」における生活環境コーディネーターを目指している。

在宅リ八における連携の大切さ

 というわけで,頼もしい強力なリハビリ職である。病院や施設のなかで自分がしている仕事に疑問を持ち,閉塞感に打ちひしがれている人はどれくらいいるだろうか。どうやら彼も私と同様,疑問を感じ,悩み,気がつけば行き着いたところは在宅だったようである。

 家に帰ったら,それまで病院ではできていたことができなくなった,あるいは歩けなくなった,寝たきりになった,というのではあまりに悲しいゴールである。私たちの願いは,人生を描き綴った自分の家で,楽しく元気に生活していただくことである。そのためのサポートが万全であれば,悲惨なゴールは明るい再スタートの場になり得る。

 もちろんスタートを切っただけでは明るい未来は望めないが,実はこんなことがよくおこる。

 運動法の指導をして,「毎日やってくださいね。24時間がリハビリの時間ですよ」と言って帰ってくる。次の訪問時に確認してみると,笑いながら「やってません」と,悪びれた様子もなく答える利用者。「先生方が来てくださると,やるんですけど,私が言うと,半分もやらないんです」と,困った顔の家族。他人の言うことはなんとか聞くが,家族には甘えやわがままが出てしまうのはよくあることである。だからこそ我々が訪問し,リハビリを継続するために一緒に行なうこと,しつこく指導することも訪問の大きな意味の1つとなる。

●リハビリは療法士に任せておけばいい?

 そもそもリハビリテーションは,訪問看護ステーションのサービス内容に含まれている。以前から当法人の理事長は「看護とリハビリは全く異質のサービスであるのに,訪問看護ステーションがリハビリを行なうのは,おかしい,おかしい・‥・‥」とぼやいていた。しかし,私たち看護師に言われてもしょうがないし,「なんでもあり」の在宅でリハビリを必要としている利用者を目の前にすれば,そんなことを深く考えてもいられない。当然,看護師も必要であれば関節可動域訓練や筋力強化,起立訓練など行なっていた。

 しかし思い返してみれば,それまでケアマネジャーからリハビリ目的の依頼は全くと言っていいほどなかった。ところがOTを採用し,挨拶回りをしたとたん,OT指名で依頼が続々と舞い込み,彼はわずか2か月足らずでパンク状態になってしまったのだ。「リハビリは療法士がやるもの」という周囲の単純な認識は正しいのだろうか。

 在宅で活躍してくれる療法士は冒頭で述べたように少ない。リハビリは療法士に任せておけばいい,というわけにはいかないのである。看護師も,利用者の状態に合わせた個別的な指導を可能な限り受けながら,積極的に取り組んでいく必要があるし,療法士はプロの目で診て実施,指導,評価を繰り返していかなければならない。利用者のためにはお互い協力し合い,より充実したリハビリテーションの提供に努めていきたいと思う。彼の熱意がもっと多くのPTやOTに伝わり,仲間が増えることを祈りながら…………。


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